空谷 獅希の章



初めに輝羅と会ったのは3年前になる。

正確には「流雨」(ルウ)が使われていない小屋の中で細い躯を抱え込むようにしてうずくまっていた
輝羅を見つけたのだが.....。
兎と間違えそうになるぐらい白い肌と赤い瞳、そして銀の髪。
身体についた数カ所の痣から彼がどこからか逃げてきたのは一目瞭然だった。

あいつは.....俺と会うまでにもいくつもの場所を転々としてきたようで俺と出会ったときは
言葉を発する事すら忘れ、まるで人形のようだった。
その綺麗な顔に微笑む事を教えるまで数ヶ月。
自分の名を言えるようになるまで....もうしばらくかかったが、初めて輝羅の声を聞いた時の感動は
今でもはっきり覚えている。
小さく俺の名を呼んだあいつを見て、俺は輝羅を守ると決めた。

俺の家族は曲芸団まがいな商売をしていた為、街から街を旅して生活していた。
動物達と生まれ育ち家族同然な生活だった所為もあり俺自身いつから動物達とも普通に話が出来る
ようになったのかは覚えていない。
世間では「異端児」と呼ばれ差別の対象になっているらしいが俺の場合は環境が違った。
一座の中で一緒にいる仲間とこのまま旅を続けたら、きっと幸せの中で過ごせただろうとも思う。
 
 俺が その環境から離れて輝羅と行動する理由は 一つだけ。

 ただ 一つの 理由。
 
 お前の欲しいものは全部俺が手にいれてやる。

 会いたい奴がいるなら一緒に探しに行こう。
 
 だから   その綺麗な赤い目で俺だけを見て。名を呼んで。

 俺はただ お前を守る存在で いたいんだ。 

 輝羅..........。

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